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難聴と認知症の関係
【監修】千葉 星雄
にじいろ補聴器 店長
言語聴覚士・認定補聴器技能者
超高齢化を迎えた我が国では、認知症が多くの方にとって関心ごととなっています。現在、高齢者の約4人に1人が認知症またはその予備軍ともいわれています。
そこで、最近注目されている難聴と認知症の関係について解説していきます。
難聴は認知症の危険因子のひとつ
2015年1月、政府は高齢化が急速に進む日本の現状に対し、認知症施策推進総合戦略「新オレンジプラン」を策定しました。
この「新オレンジプラン」では『認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す』とされており、認知症予防の推進と認知症高齢者の日常生活を支える仕組みづくりに、国をあげて取り組み始めています。
ここで改めて注目されるようになったのは、認知症の危険因子として、加齢、遺伝、高血圧、糖尿病、喫煙等とともに「難聴」が加えられたということです。
加齢により「聞こえにくくなる」というのは誰しもに起こりうることですが、「聞こえにくい」状態がなぜ認知症の危険因子となるのでしょうか。
「聞こえにくい」ことによる影響
何となく聞こえにくくなってきて多少の不便は感じていても、それほど困っていないという風に思っている人は多いかもしれません。
また、日本で聴力が低下している人はおよそ1,500~2,000万人いるともいわれていますが、そのうち半数近くの人は聴力低下の自覚がないとする報告もあります。
このように「難聴」というのは自覚しにくいものでありますが、徐々に進行することで様々な影響を及ぼします。
コミュニケーションの減少
難聴を放置した場合に考えられることは、周囲の人とのコミュニケーションの減少です。
他人の言っていることがよく聞き取れない、会話がうまく成立しない、大きな声で話さないといけない、といった問題は本人にとっても周囲にとってもストレスになる可能性があります。
こういった経験を繰り返すと、周囲との会話を無意識に避けてしまうようになるかもしれません。
その結果、人間関係の悪化や、外出が減ってしまうなど、社会との交流が減少し、「コミュニケーションの減少」を招く悪循環が生じてしまいます。
脳への刺激の減少
音声による会話コミュニケーションにおいて、人は耳に入ってきた言葉を、脳で理解・思考して、言葉を発する、という一連の流れを繰り返していくことで成立します。
これらの処理の連鎖を「スピーチ・チェーン(言葉の鎖)」といいます。
つまり、音声コミュニケーションのスタート地点として、耳で言葉を聞くという過程が存在します。
難聴により、耳で言葉を聞くことが阻害されてしまうということは、脳で思考をするための情報量が減少してしまうことになります。
聴覚情報は、会話を理解するだけでなく、「楽しい」「うれしい」などの情動を引き起こすものでもあります。
聞こえてくる音(刺激)やコミュニケーションなど外からの情報が入ってこない、会話が少ないという状態が長く続くと精神活動が抑えられてしまい、抑うつ状態等につながる可能性が様々な研究で示唆されています。
補聴器の装用は認知症予防になるのか
難聴そのものが直接認知症を引き起こすわけではなく、難聴を放置しても必ずしも認知症を発症するわけではありません。
しかし、難聴に伴うコミュニケーションの減少から心理的・社会的孤立や思考の不足につながり、認知機能が低下してしまうのではないかと考えられているいうことです。
また、本当は認知症ではないのに、難聴による意思疎通の困難から認知症のように勘違いされてしまっているケースもあります。
難聴になった場合に補聴器を装用するだけで認知症を予防できるかというとそういうわけではありません。
ただし、補聴器を装用することで、より積極的にコミュニケーションができるようになり、社会への参加意欲を高めていくなど、いきいきとした毎日を過ごす手助けになってくれることでしょう。
まとめ
超高齢化社会の日本において大きな関心ごとである認知症。その危険因子のひとつとして「難聴」が注目されています。
難聴が認知症の危険因子と考えられている理由の一つは、聞こえにくさによるコミュニケーションの減少です。
補聴器で聞こえにくい状態を改善することはもちろん重要ですが、加齢による聞こえにくさは完全には元には戻りません。
円滑なコミュニケーションのためには難聴者本人だけでなく、周囲の理解も必要です。
ぜひご家族様も一緒に、言語聴覚士などの専門家にご相談ください。
(本記事は、言語聴覚士が作成・監修しています。)
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この記事を監修した人
にじいろ補聴器 店長
言語聴覚士・認定補聴器技能者
千葉 星雄(ちば としお)
北海道出身・北海道大学 工学部 卒業
茅ヶ崎リハビリテーション専門学校 言語聴覚学科 卒業
言語聴覚士免許取得後、補聴器専門店と補聴器メーカーでの勤務を経てにじいろ補聴器を開業。