感音性難聴の特徴・原因・治療について

感音性難聴の特徴・原因・治療について
千葉 星雄

【監修】千葉 星雄

にじいろ補聴器 店長
言語聴覚士・認定補聴器技能者

感音性難聴(感音難聴)は、突発性難聴やメニエール病など、耳にしたことがあるような疾患が原因にもなります。また、高齢になって自然と聴力が低下していく難聴は、感音性難聴にあたります。つまり、誰しもが、いずれは感音性難聴になる可能性があるのです。

感音性難聴は、どういった難聴なのでしょうか。この記事では、感音性難聴について紹介していきます。

伝音性難聴と感音性難聴

難聴は耳のどの部位が原因になるかによって、大きく2種類に分けられます。ひとつは伝音性難聴といい、もうひとつを感音性難聴といいます。

伝音性難聴とは?

耳の入り口から鼓膜の手前までを外耳といいます。そして、鼓膜の奥には、小さな骨が組み合わさって、てこの原理で音を大きくしている部分があります。この部分を中耳といいます。

外耳から中耳までを伝音系といい、音は空気の振動として伝わっていきます。伝音系に何らかの障害が生じた難聴を伝音性難聴といいます。

感音性難聴とは?

中耳より奥には内耳と呼ばれる部分があります。内耳には蝸牛というカタツムリの殻のような器官と、人間のバランスにかかわる前庭器官があります。

蝸牛には、音を電気信号に変える有毛細胞が並んでおり、外から伝わってきた音を神経や脳に伝えています。内耳から中枢にかけてを感音系といい、感音系が原因の難聴を感音性難聴といいます。

感音性難聴の症状

感音性難聴は、音の情報が電気信号に変わって脳に伝わるまでに何らかの問題があって起こる難聴です。音の情報が脳に正確に伝わらなくなるということは、どういうことでしょうか。

ことばの聞き取りの難しさとは?

私たちの身の回りにある音は、複数の音が組み合わさってできています。たとえば「あ」という音で考えてみましょう。「あ」という音は、高い音から低い音まで、決まった組み合わせで音が集まってできあがっています。まるでパズルのピースが集まっているようです。

感音性難聴はパズルのピースが、あちこちで欠けている状態です。なくなったピースの数や場所は人によって異なり、パズルのピースが欠けていくほどに情報は少なくなります。

特に日本語の場合には、「あいうえお」という母音に、子音が加わります。この子音部分の情報が欠けていくと、「さかな」が「あああ」に聞こえてしまうことだってあるのです。

感音性難聴では、音の情報が欠けているために、音がぼやけて聞こえたり、本人は聞いているつもりでも正しく聞こえていなかったりということが起こります。

ことばの聞き誤りの影響は?

ことばの聞き誤りは、人とのコミュニケーションに支障をきたすことがあります。会話がなかなか噛み合わないだけではなく、約束の内容を間違えて仕事や人間関係に支障をきたすこともあります。また、お子さんであれば、学校生活やことばの発達に影響があらわれるかもしれません。

感音性難聴の原因

感音性難聴の原因としては、生まれつきの場合や、人生の過程で何らかの病気を発症したことによって難聴になってしまう場合があります。

生まれつきの原因

遺伝的な要因

遺伝的な要因は、子どもの難聴の1/3 を占めていると考えられています。難聴に関わる遺伝子は複数あり、数百の遺伝子が関わっているとも言われています。

妊娠中の母体のウイルス感染

妊娠中にウイルス感染をすることで、産まれてきた子どもが難聴になることがあります。風疹は近年ニュースになり、注意が呼びかけられました。その他、サイトメガロウイルス、トキソプラズマ、梅毒などがあります。

その他

早産やある種の抗生物質を服用したときにも、お子さんの聴力に影響が出ることがあります。

後天的な原因

髄膜炎

髄膜炎は、ウイルスや最近が脳や脊髄を覆っている膜に感染して炎症を起こす病気です。生命に関わることもある病気ですが、回復後の後遺症として難聴や失聴を起こすことがあります。

突発性難聴

ある日とつぜん、片耳の聴力が低下する難聴です。原因ははっきりしていないものの、治療開始は早いほど良いと言われています。

メニエール病

メニエール病は、内耳にある前庭器官が原因となる病気です。ぐるぐるとしためまいが特徴的ですが、感音性難聴を伴うこともあります。

老人性難聴

内耳の蝸牛にある細胞は、20代ごろから年齢とともに減っていってしまいます。高音域を担当する細胞から徐々に減っていくため、だんだんと高い音が聞こえなくなっていきます。変化は緩やかなため、本人はなかなか気づかず、周囲の人がコミュニケーションが取りづらくなって気づくということがあります。

ここでは感音難聴に分類しましたが、実際には伝音難聴を併せ持っている場合も多く、「混合性難聴」と分類される場合もあります。

騒音性難聴(音響外傷)

コンサートやライブで、スピーカーから突然の大きな音を聴いたり、工事現場でいつも騒音の中で過ごすことで、内耳の細胞が壊れていってしまう難聴です。現代では、イヤホンやヘッドホンを使うことが原因(ヘッドフォン難聴)となることも多く、小さなお子さんが難聴になるリスクもあります。

聴神経腫瘍

聴神経に腫瘍ができてしまうことで、内耳からの情報が中枢に伝わらなくなって起こります。

感音性難聴の治療方法は

感音性難聴の治療は、積極的に行えるものと行えないものがあります。

治療ができるものは治療を行う

治療や、症状の進行を抑えるための予防方法があるときには、まず優先して行います。感音性難聴を引き起こす原因の中には、早期に治療を開始すれば聴力が回復したり、それ以上悪化することを防ぐことができるものもあります。

たとえば、突発性難聴は、症状があらわれてから2週間以上すぎると、その後の治療効果が低下するという報告もあります。また、騒音性難聴は、治療にあわせて耳を守るための工夫を行うことで、難聴の進行を抑えることにもつながります。

積極的な治療が難しいこともある

生まれつきの疾患による難聴や、加齢によって徐々に進行した老人性難聴などでは、聴力の回復が難しいことがあります。また、たとえ治療を行っても十分な回復ができず、難聴が後遺症として残ることもあります。

感音性難聴と補聴器

何らかの原因で難聴になってしまったときは、すぐに補聴器の購入を考える人もいるかもしれません。補聴器を買う前に、つぎのポイントも理解しておきましょう。

補聴器は使ったほうがいいの?

感音性難聴は、実は補聴器が苦手な難聴です。しかし、現在の補聴器はほぼデジタル化しており、個人に合わせた丁寧な調整を行うことができるようになっています。補聴器を使用して、残った聴力を最大限に引き出すことで、生活のしやすさにつながります。

ただし、補聴器は買って終わりの機器ではありません。定期的にメンテナンスを行っていくことで、自分だけの補聴器をつくりあげていくことが大切です。

補聴器はいつつくるの?

特に急激に聴力が低下するような疾患では、急激な聴力低下から2ヶ月間は、いきなり補聴器販売店で補聴器をつくることができません(耳鼻咽喉科医の診察が必須)。これは治療を受けることで、聴力が回復する可能性がある期間とされているからです。まずは耳鼻科で必要な治療を受けることが優先されます。

まとめ

感音性難聴は、内耳の細胞が何らかの原因でダメージを受けてしまうことで起こります。音がぼやけたり、ことばが聞き取りにくくなるため、仕事や学校生活に支障がでることもあります。

現代の補聴器は、個人に合わせて細やかな調整ができるようになってきています。残った聴力を最大限いかすために、ちょっとした困り感でも補聴器店で相談して自分だけの補聴器をつくっていきましょう。

(本記事は、言語聴覚士が作成・監修しています。)

この記事を監修した人

千葉 星雄

にじいろ補聴器 店長
言語聴覚士・認定補聴器技能者

千葉 星雄(ちば としお)

北海道出身・北海道大学 工学部 卒業
茅ヶ崎リハビリテーション専門学校 言語聴覚学科 卒業
言語聴覚士免許取得後、補聴器専門店と補聴器メーカーでの勤務を経てにじいろ補聴器を開業。