イヤホンやヘッドホンで難聴になる原因と改善方法

10月1日(火) 補聴器専門店「ブルーム三田店」としてリニューアルオープン

イヤホンやヘッドホンで難聴になる原因と改善方法
千葉 星雄

【監修】千葉 星雄

にじいろ補聴器 店長
言語聴覚士・認定補聴器技能者

ライブで突然大きな音を聞いたり、工事現場などで慢性的に騒音の中で過ごしたりすることで難聴になることがあります。このように、外から入ってきた音によって難聴が引き起こされることを音響外傷といい、最近はイヤホンやヘッドホンの使用による音響外傷のリスクが心配されています。

世界保健機関(WHO)の調査によると、世界の中高所得国の若年層(12~35歳)の約50%が、携帯音楽プレーヤーなどを使うことで、耳に負担がかかるレベルの音量にさられているという報告があります。

イヤホンやヘッドホン難聴の特徴

ヘッドホン難聴のこわい点は、本人が気づかないうちに症状が進んでしまう可能性があることです。

音の高さはヘルツという単位で示されますが、数字が大きいほど高い音をあらわしています。人間は20歳で、20~20,000Hz(ヘルツ)と幅広い高さの音を聞いているといわれており、加齢にともなって高い音から徐々に聞こえなくなっていきます。

一方、人間が生活の中で使う音の高さは、おおよそ200~4,000Hzの範囲と言われています。つまり、通常の生活の中では、音を聞く能力についてはかなり余裕をもって生活ができています。

しかし、この余裕が、難聴に気づきにくくさせる要因となります。イヤホンやヘッドホンによる難聴は、高音から障害されていき、かなり進行するまで気づかれないことがあるのです

イヤホンやヘッドホン難聴の原因

イヤホンやヘッドホンによる難聴の原因について説明しましょう。

内耳の聴覚細胞は消耗されてしまう

音は、耳に入るときは空気の振動で、振動が多いほど高い音になります。この震えが、耳の穴や鼓膜を揺らすことで耳の奥の中耳に伝わり、さらに奥の内耳に届きます。

内耳には、たくさんの音を感じる細胞がならび、音を電気信号に変えて神経や脳に伝えています。内耳にある細胞は、空気の振動を受けつづけることで、機能が低下し、だんだんと細胞の数が減っていってしまいます。

一旦なくなってしまった細胞は、現代の医学では再生することは難しいため、細胞が減った分、音の情報が失われることになります。

イヤホンやヘッドホンは場所や時間を選ばないけれど…

イヤホンやヘッドホンは、現在はオーディオ機器だけではなく、スマートフォン、ゲーム機、タブレットなど、さまざまな機器で用いられています。また、これらの機器は、持ち運びもしやすく、場所や時間を選ばずに使用されています。

そして、イヤホンやヘッドホンは、通勤や通学の雑踏や電車の中で用いることは多いのではないでしょうか。こういった雑音の中では、ついついボリュームを大きくしてしまいがちです。

また、休憩もとらずに何時間も音を聞いている人もいるかもしれません。音を長く聞いているということは、空気の振動が耳の中に伝わっているということです。

大きな音は大きな空気振動になり、長く聞けば、長く振動を感じて負担になります。そして、本人も気が付かないうちに、難聴が引き起こされる可能性があるのです。

イヤホンやヘッドホン難聴の治療は

聞こえに異変を感じたら耳鼻咽喉科を受診して、必要な治療を受けていきます。

治療について

治療の開始は、早ければ早いほど良いといわれています。治療では、主に、ステロイド剤のほか、ビタミン剤や血流改善薬を用いることもあるようです。

ある程度治療が落ち着いた後は、これ以上進行させないことを目的とした対応が行われます。

補聴器は必要になるの?

残念ながら治療が遅れたり、薬の効果が得られず、病前と同じような聴力の回復がむずかしいということもありえます。

医師と相談の上で、コミュニケーションや、生活のしづらさを改善するために補聴器をつかうこともあるでしょう。

イヤホンやヘッドホン難聴の予防方法

イヤホンやヘッドホンによる難聴は、一度起こってしまうと回復しないこともあります。耳を守るためには安全とされる音のレベルについて知り、予防をしておくことが大切です。

耳が安全とされるレベル

耳を守るためには、「音量」「時間」「頻度」の3つの要素で考えていく必要があります。たとえば、短時間で一度のみであっても、とてつもなく大きな音にさらされれば耳への負担が非常に大きくなるということです。

以下のサイトには、安全とされている音の大きさ(デシベル)と、時間、生活の中での例が一覧表になっています。

参考(PDF)

一般社団法人 日本ITU協会 ITUジャーナル Vol.47 No.2 (2017,2)
参考資料によると、大きな音になるほど、極めて短時間で耳への負担が大きくなることがわかります。

イヤホンやヘッドホン難聴を予防するには

安全な音の考え方を踏まえて、イヤホンやヘッドホンを使うときの注意点を挙げていきましょう。

1. ボリュームは上限を決める

大きな音は大きな振動となり、耳に負担を与えます。周りがうるさくて聞こえないからと、聞こえる大きさまでボリュームを上げると耳の負担は非常に大きくなります。ボリュームを上げるときは、聞こえる大きさまで上げるのではなく、数字を決めておきましょう。

イヤホンやヘッドホンを使用するときの安全なレベルは、静かな場所で周りの会話が聞こえる程度の音量です。また、音楽プレーヤーなどでは、最大音量の60%以下であれば安全とされます。

新しい機器を買ったら早く使ってみたくなるものですが、安全なレベルを確認しておくことが大切です。また、お子さんが使うときは大人が確認をし、しっかり約束をしておきましょう。本人任せにせず、耳について話し合っていくことが大切です。

2. イヤホンやヘッドホンを選ぶ

遮音性の高いヘッドホンを用いれば、外界の雑音を遮断して、聞きたい音のみを集中して聞くことにつながります。また、ノイズキャンセリング機能といって、周りの雑音(ノイズ)を打ち消してくれる機能をもったヘッドホンもあります。

いずれも、過剰にボリュームを上げることを防ぎます。価格や性能は多様になっていますから、店頭で販売スタッフに質問をしたり、聞き比べをしたりして比較検討してみてはいかがでしょうか。

3. 耳の休憩時間をつくる

イヤホンやヘッドホンをどんなに調整をして使ったとしても、耳にも休憩する時間は必要です。使用時間を区切り、イヤホンやヘッドホンを外して静かな時間を意識してつくることも大切です。

まとめ

イヤホンやヘッドホンによる難聴は誰しもがなる可能性がある障害です。現代では、イヤホンやヘッドホンを使用する人は、特に若年層に多いのかもしれません。自分で意識することができないような年齢のお子さんもいますから、周りの大人が気にかける必要もあるでしょう。音楽、ゲーム、ビデオなどは大切な余暇のひとつです。しっかりと対策をとって、楽しんでいきましょう。

(本記事は、言語聴覚士が作成・監修しています。)

この記事を監修した人

千葉 星雄

にじいろ補聴器 店長
言語聴覚士・認定補聴器技能者

千葉 星雄(ちば としお)

北海道出身・北海道大学 工学部 卒業
茅ヶ崎リハビリテーション専門学校 言語聴覚学科 卒業
言語聴覚士免許取得後、補聴器専門店と補聴器メーカーでの勤務を経てにじいろ補聴器を開業。