補聴器の両耳装用

10月1日(火) 補聴器専門店「ブルーム三田店」としてリニューアルオープン

補聴器の両耳装用
千葉 星雄

【監修】千葉 星雄

にじいろ補聴器 店長
言語聴覚士・認定補聴器技能者

補聴器は1台だけでも高額であるため、片耳だけの装用を検討する人も少なくはありません。

しかし、本当に片耳だけで良いのでしょうか。この記事では両耳で聞くことのメリット・デメリットをお伝えしていきましょう。

補聴器は両耳装用が勧められる

販売店で補聴器の購入を相談すると、両耳に難聴があることが判明しているときは両耳に補聴器をつけることを勧められます。

補聴器の価格は高額であるため、片方の耳だけで良いという人もいますが、両耳に装用することで、より快適な聴こえになると考えられているからです。

両耳で聞くことのメリットとは?

海外では、両耳に難聴がある場合には補聴器の両耳装用が基本となっています。

では両耳装用で音を聞くことのメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

音の方向がわかりやすい

私たちは、音が聞こえてくる方向をある程度把握することができます。これは、左右の耳から入る情報を、左右の脳が分析をして統合し、細かな方向性を推測しているからです。

片耳だけのときは1対1での会話や、慣れた場所での生活においては大きな困り感は感じないかもしれません。

しかし、車の音や、危険を示す音などが察知できないことは外出時の安全性を低くし、活動の幅が狭くなってしまう可能性があります。

大勢の中の会話が聞き取りやすい

人間の聴覚は非常に繊細で優れた機能を持っています。耳から音が入っていても、必要がない場面では目立たないように脳が処理する力をもっています。

たとえば、パーティなど大勢の人が会話をしたり、音楽や食器の音などたくさんの音が溢れたりしているような場所でも、目の前に居る人の話声だけに注目できるように調整をしているのです。

しかし、この機能は片耳だけの聞こえでは調整が上手くいかず、疲労が強くなる可能性があります。

ボリュームが小さくても聞こえる

片耳だけで聞くときは、両耳に比べると聴こえにくさがあります。その結果として、テレビのボリュームを大きくしたり、補聴器を着けている人は出力を必要以上に上げてしまったりすることがあります。

聴覚は繊細な器官で、騒音や疲労などによっても消耗してしまうことがあります。長期的な視点で聴覚の機能を維持するためには、片耳の負担が大きくなりすぎないことは大切ではないでしょうか。

自然に聞こえる

音の方向性を測るときもそうですが、左右の耳から入って来た情報は脳で統合されています。片耳だけの情報ではなく、左右からバランスよく情報が入ることは、聴き取りやすさを高めると言われています。

補聴器を両耳装用にするデメリットは

補聴器は両耳装用ばかりを勧められますが、補聴器を両耳に装用することのデメリットはあるのでしょうか。

デメリットは、やっぱり価格面

補聴器を片耳装用ではなく両耳装用にするデメリットは、機能面ではあまりありません。唯一挙げるとするならば、やはり費用の面でしょう。

補聴器は管理医療機器にあたるため、気軽に買える値段ではありません。しかも1台だけではなく2台分となれば、それならば買わないほうがまだ良いと購入そのものを諦める人もいるかもしれません。

しかし、聴こえにくさが生活や社会参加に与えるデメリットは大きいものです。金額の面だけではなく、補聴器を使用する人がどのような暮らしをしたいのか、あるいは家族がどのような暮らしを願っているのかを丁寧に考えていきましょう。

また、生活に負担をかけてまで無理に高額なものを買わなくても、予算の中で最大のメリットが引き出せる機種を選ぶという選択肢もあります。

両耳装用が不適な人もいる

両耳装用が勧められるのは、左右の耳に難聴があり、さらに補聴器を装用することで効果が得られる状態にあるときです。

聴覚は非常に繊細で複雑な機能です。聴力だけではなく、ことばの聞き取りの力も補聴器の効果に関係をします。耳鼻科医や専門性のある販売店でしっかりと相談をしましょう。

日本の両耳装用の状況は?

一般社団法人日本補聴器工業会の最新の調査報告(JapanTrak2015)によると、日本の補聴器所有者のうち約半数が両耳装用をしています。

しかし一方で、約半数は片耳装用となっているという状況です。その理由として、片耳装用者の多くは両耳に難聴があるにも関わらず、片耳装用と両耳装用の効果が同じと考えているという点が挙げられていました。

しかし、片耳装用と両耳装用では効果が異なります。両耳装用のメリットがきちんと知られていけば、両耳装用の方が増えていくのではないでしょうか。

まとめ

補聴器の両耳装用には、いくつものメリットがあります。補聴器の性能を十分に引き出して、快適な聞こえに繋げるためには両耳装用が望ましいでしょう。

一方で、デメリットは価格以外の面では見当たりません。しかし、価格は購入者にとっては大きな判断材料です。購入時は予算もしっかりと伝えて、ベストな補聴器を見つけていきましょう。

(本記事は、言語聴覚士が作成・監修しています。)

この記事を監修した人

千葉 星雄

にじいろ補聴器 店長
言語聴覚士・認定補聴器技能者

千葉 星雄(ちば としお)

北海道出身・北海道大学 工学部 卒業
茅ヶ崎リハビリテーション専門学校 言語聴覚学科 卒業
言語聴覚士免許取得後、補聴器専門店と補聴器メーカーでの勤務を経てにじいろ補聴器を開業。