補聴器の防水や防塵の等級を表す「IPxx」とは

補聴器の防水・防塵規格
千葉 星雄

【監修】千葉 星雄

にじいろ補聴器 店長
言語聴覚士・認定補聴器技能者

補聴器は毎日肌に密着させて使うものですので、どうしても汗の影響を受けやすくなっています。補聴器の故障のリスクである汗や湿気、細かいホコリ等から守るために、各メーカーとも製品の防水・防塵性能を強化してきています。

ここでは、各メーカーのカタログ上でも示される防水・防塵の保護等級の見方を解説していきます。

故障のリスクを少しでも減らすためにも、補聴器の防水・防塵性能もチェックしてみましょう。

「IP〇〇」の形で示される防水・防塵の保護等級

補聴器のカタログ上に示されている「IP57」や「IP68」といった表記をIPコードといい、防水・防塵性能を示すものとなっています。
IPとは「International Protection」の略であり、IPコードはIEC(国際電気標準会議)やJIS(日本工業規格)で電気機械器具に対する保護等級として定められています。

IPに続く2つの数字が保護等級を表します。1つ目の数字が、外来固形物に対する保護等級いわゆる「防塵」の性能を示し、2つ目の数字が、水の浸入に対する保護等級いわゆる「防水」の性能を示しています。
つまり、「IP68」とは防塵性能が6級、防水性能が8級であることを意味します。

また、防水・防塵のどちらかの性能を省略する場合は該当部分を「X」で表します。

1つ目の数字、防塵性能の等級

防塵の等級は0級から6級までの7段階となっています。

  • 0級:特に保護がされていない
  • 1級:直径50mm以上の固形物(手など)が内部に侵入しない
  • 2級:直径12.5mm以上の固形物(指など)が内部に侵入しない
  • 3級:直径2.5mm以上の固形物(工具先端など)が内部に侵入しない
  • 4級:直径1mm以上の固形物(ワイヤーなど)が内部に侵入しない
  • 5級:有害な影響が発生するほどの粉塵が内部に侵入しない(防塵形)
  • 6級:粉塵が内部に侵入しない(耐塵形)

2つ目の数字、防水性能の等級

防水の等級は0級から8級までの9段階となっています。

  • 0級:特に保護がされていない
  • 1級:鉛直に落下する水滴によって有害な影響を受けない(防滴I形)
  • 2級:鉛直から15度の範囲で落下する水滴によって有害な影響を受けない(防滴II形)
  • 3級:鉛直から60度の範囲で落下する水滴によって有害な影響を受けない(防雨形)
  • 4級:いかなる方向からの水の飛沫によっても有害な影響を受けない(防まつ形)
  • 5級:いかなる方向からの水の直接噴流によっても有害な影響を受けない(防噴流形)
  • 6級:いかなる方向からの強い水の直接噴流によっても水が浸入しない(耐水形)
  • 7級:水深1mに30分間没しても水が内部に浸入しない(防浸形)
  • 8級:指定圧力の水中に常時没して使用できる構造(水中形)

耳かけ型ではIP57以上の補聴器がおすすめ

より汗の影響を受けやすい耳かけ型補聴器の場合、防水性能は故障のリスクを減らす上で特に重要になってきます。

防水性能が7級以上であれば、万が一、水に濡れてしまったとしても有害な影響を与えるほど内部に水が浸入しない構造となっていますので、日常生活においては比較的安心して使える構造であると言えるでしょう。

耳あな型補聴器については、耳かけ型補聴器ほどの高い防水等級が取得できていない場合もありますので、カタログを確認の上、使用の際は十分注意しましょう。

防塵・防水性能を過信しない

IP68などの高い防塵・防水性能を持った補聴器であれば、絶対安心かというとそういうわけではありません。

あくまで保護等級は、定められた試験環境下での性能を示したもので、防水等級8級であったとしても「完全防水」とは異なります。お風呂やプール、海水浴といった環境での使用も想定されていません。
また、各メーカーの保証規定として、原則、水没による故障は保証の対象外となっています。

高い保護等級であるに越したことはないですが、あまり過信せずに日々のお手入れやお店での定期的なメンテナンスを心がけましょう。

まとめ

故障のリスクを減らす上で意識すると良いのが、「IP〇〇」の形で示される防水・防塵の保護等級です。

等級を取得している場合は、各メーカーのカタログに記載されているので確認してみることをおすすめします。

ただし、保護等級の過信は禁物です。日頃のケアを忘れずに行うことで、補聴器を長く良い状態で使用していくことができるでしょう。

(本記事は、言語聴覚士が作成・監修しています。)

この記事を監修した人

千葉 星雄

にじいろ補聴器 店長
言語聴覚士・認定補聴器技能者

千葉 星雄(ちば としお)

北海道出身・北海道大学 工学部 卒業
茅ヶ崎リハビリテーション専門学校 言語聴覚学科 卒業
言語聴覚士免許取得後、補聴器専門店と補聴器メーカーでの勤務を経てにじいろ補聴器を開業。