補聴器と集音器の違い

10月1日(火) 補聴器専門店「ブルーム三田店」としてリニューアルオープン

補聴器と集音器の違い
千葉 星雄

【監修】千葉 星雄

にじいろ補聴器 店長
言語聴覚士・認定補聴器技能者

新聞やチラシ、あるいは家電量販店などで、補聴器に良く似た機器が手頃な価格で紹介されているのを見たことはないでしょうか。

補聴器に良く似た、と表現したのは、それらが補聴器ではなく集音器という別の機器であることが殆どだからです。

この記事では、誤解されやすい集音器と補聴器の違いについて理解を深めていきましょう。

補聴器は管理医療機器に該当している

補聴器は医療機器の中でも管理医療機器にあたりますが、集音器は違います。では医療機器とはどういったものなのでしょうか。

医療機器は製造や販売において一定の基準を満たしている

医療機器とは、薬事法で定められた一定の基準を満たす機器のことです。

薬事法では、医療機器を一般医療機器、管理医療機器、高度管理医療機器の3つに分類しており、それぞれに基準が設けられています。

補聴器は管理医療機器に分類されており、新製品が開発されるたびに、効果や安全性について厚生労働省から認可を受ける必要があります。

また、販売においても対面販売が基本であるなど、さまざまな制約が設けられています。

定期的なメンテナンスが必要

管理医療機器である補聴器は、購入時の丁寧なカウンセリングやテスト装用などを行います。

また、購入後も使用する人が快適な聴こえ方で過ごせるように、定期的にプロによるお手入れやメンテナンスが必要となる機器です。

また、補聴器は「ピー」という音を聞きとる聴力検査で測定するだけではなく、耳鼻科での様々な検査結果や、ことばの聞き取りの検査結果、家庭での生活の様子など複数の情報を総合して調整されます。

補聴器の相場は集音器に比べると高額になりますが、そこには補聴器本体の価格だけではなく、カウンセリングやメンテナンス料が含まれていると考えて良いでしょう。

集音器は補聴器とは異なる機器

集音器は形状こそ似ているものの、補聴器とは全く別のものです。集音器の特徴について挙げていきましょう。

集音器はボリュームを上げる機器である

集音器は、補聴器と同様に耳が聞こえづらくなったという方を対象とする機器で、補聴器に良く似ているものが多くあります。

基本的な機能は、テレビのボリュームを上げるように音をそのまま大きくすることです。

新聞やインターネットでの通信販売や家電量販店などで販売されていて、補聴器に比べると気軽に購入ができます。

また補聴器に比べると安価なため購入する人もいるかもしれません。

ボリュームが大きくなれば聞こえやすくなるわけではない

集音器は基本的には小さな音を大きな音にするのみです。しかし、人間の聴覚は非常に繊細で複雑な機能のため、ただボリュームが大きくなっただけで聞こえやすさに繋がるとは限りません。

たとえば、高音が聞こえにくく、低音は比較的よく聞こえている人が集音器を使用するとしましょう。

ボリュームを上げれば確かに高音は大きくなりますが、同時に十分に聴こえている低音までもが大きくなってしまいます。

その結果、聴こえにくさが改善するどころか、逆にうるさく感じてしまうということが起こります。

集音器は個人に合わせる機器ではない

聴力の低下の幅や、その結果として日常で困っていることは個人によって異なります。

補聴器は購入後のアフターフォローを前提として販売されている管理医療機器ですが、インターネットや通販で手軽に購入できる集音器は、安全性や一定の効果、販売の基準を満たしているものではありません。

故障などに対する保証はあるかもしれませんが、個人の聴こえ方に合わせた細やかな調整までは対応していないでしょう。

集音器は必ずしも効果や満足度が得られないわけではありませんが、補聴器とは別ものであることを知っておく必要があります。

個人に合った聴こえは補聴器が得意

集音器も補聴器も対象としているのは、聞こえに困り感を抱えている方々です。

しかし、聴こえに困り感を感じている点では同じでも、どの音が、どの程度聞こえにくいのか、またどういった場面で聴こえにくいのか等は個人によって異なります。

また、たとえば聴こえの原因には、治療が必要であったり、聴力が変動したりする可能性があるものもあります。

快適な聴こえ方を得るためには、耳鼻科医師の診察や治療、助言も得て、長期的な視点で選択していくことも必要です。

最近聞こえにくいからと、安易に集音器を購入するのは避けた方が良いのではないでしょうか。

まとめ

手頃な価格で購入できる集音器は、補聴器と誤解されやすい機器です。

聴こえにくさを感じる人を対象としている点は補聴器と同じで、聴こえにくさについて効果が全く期待できないわけではありません。

しかし、管理医療機器として一定の基準を満たす補聴器とは別のものです。聴覚は非常に繊細で、場合によっては医師の治療や助言を得ることが非常に大切なこともあります。

安易に購入を決めるのではなく、聴こえにくくなった原因をきちんと知り、自分に必要な機器を選んでいくことが、快適な聴こえ方への近道かもしれません。

(本記事は、言語聴覚士が作成・監修しています。)

この記事を監修した人

千葉 星雄

にじいろ補聴器 店長
言語聴覚士・認定補聴器技能者

千葉 星雄(ちば としお)

北海道出身・北海道大学 工学部 卒業
茅ヶ崎リハビリテーション専門学校 言語聴覚学科 卒業
言語聴覚士免許取得後、補聴器専門店と補聴器メーカーでの勤務を経てにじいろ補聴器を開業。