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音が聞こえる仕組み
【監修】千葉 星雄
にじいろ補聴器 店長
言語聴覚士・認定補聴器技能者
音はどこで聞いているの?と聞かれれば多くの人は「耳」と答えるでしょう。
しかし、外から見える部分は音を聞くために必要な部分のほんの一部だけです。聴覚は、人間のもつ感覚の中でも複雑で繊細なもののひとつで、音は複雑な過程を経て脳に伝わっています。
今回は音が聞こえる仕組みについて紹介していきましょう。
耳のしくみ
まずは、人が音を聞くときに関係する各部位について説明していきます。
音を聞くことに関係する部位
外耳
外耳は耳介と外耳道から成ります。耳介は顔の外に突出しているいわゆる「耳」の部分で、耳介の形や大きさは人によって異なります。
そして、いわゆる耳の穴の入口を外耳孔、さらに鼓膜までの部分を外耳道といいます。外耳の働きは、耳介の部分で音を集めて外耳道に送り込み、鼓膜に伝えることです。このとき音は空気の振動として伝わります。
中耳
中耳はまず外耳道との境目に鼓膜があり、その先にはツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨という三種類の小さな骨があります。この骨をまとめて耳小骨といい、耳小骨がある空間を鼓室といいます。
さらに、鼓室には、喉に繋がる管(耳管:じかん)の入口があります。耳管は開閉をすることで中耳の中の圧力を調整しています。風邪のときに耳が詰まったようになるのは喉と耳が繋がっていることが関係をしています。
耳小骨の最も奥にあるアブミ骨は次に説明する内耳に繋がっています。中耳では、外耳から伝わってきた音の振動を増幅させる働きがあります。
内耳
内耳は骨迷路(こつめいろ)とも呼ばれるほどの複雑な構造をしています。内耳には聴覚に関わる蝸牛(かぎゅう)のほかに、平衡覚という、揺れや速度などを感じる前庭(三半規管、卵形のう、球形のう)という器官があります。
蝸牛はカタツムリの殻のような形をしていて、中には有毛(ゆうもう)細胞という振動を感じる細胞が並び、リンパ液で満たされています。
有毛細胞には外有毛細胞と内有毛細胞という2種類があり、蝸牛の中には合計で約15,000個の有毛細胞が並んでいるといわれています。中耳の耳小骨の振動でリンパ液が揺れると、その振動を有毛細胞が感じ取って電気信号に変化させます。
中枢
内耳から渡された情報は、聴神経を介して脳に伝わります。脳は、経験をもとにして音に関わる情報を蓄えています。
たとえば、単語などの短い言葉から、文法の変化、音の情報やことばの情報を蓄えています。また、環境に存在する音についても、情報が蓄積されていきます。
脳は、ことばの辞書の役割を果たし、伝わってきた音の情報と、辞書の内容を照らし合わせて、ことばの理解に繋げます。
伝音系と感音系
耳の病気を分類したり、難聴の種類を分類したりするときに「伝音系」と「感音系」という言葉を使うことがあります。
大きく分けると、外耳と中耳のことを伝音系、内耳から中枢を感音系といいます。伝音系では音は振動として伝わり、感音系では、音は電気信号に変化して伝わっています。
難聴の種類を分類する際には、伝音系が原因の難聴を伝音難聴(伝音性難聴)、感音系が原因の難聴を感音難聴(感音性難聴)と言います。
音が聞こえる流れ
音は、外耳から入り、中耳、内耳を経て脳まで伝わっていきます。それぞれの部位を通りながら音は性質を変化させていくのです。音が聞こえる流れについて説明します。
音は振動として伝わる
私たちが聞いている音は、実は空気の振動です。もちろん目には見えませんが、波をイメージすると良いでしょう。
波の高さが高いほどに音量が大きく、小さいほどに音量は小さくなります。そして、ある時間内の波の数が多いほど高い音に、波の数が少ないほどに低い音になります。
外耳道を伝わった空気の振動は、鼓膜を震わせることによって中耳に伝わります。そして、中耳の耳小骨は、てこの原理で振動を増幅させる働きをしています。ここまでは、音は振動の状態です。
振動は電気信号へ変化する
中耳で大きくなった振動は内耳に伝わります。内耳にある蝸牛にはリンパ液の中に振動を感じる有毛細胞がびっしりと並んでいます。
振動が伝わってきてリンパ液が揺れると有毛細胞がその揺れを感じとって電気信号に変えるという仕組みがあります。
有毛細胞にはそれぞれ役割があり、中耳に近い部分では高い音を感じ、奥にいくほどに低い音を感じる構造になっています。
そして、この電気信号となった情報が、聴神経を介して最終的に脳に伝わることになります。感音系では、音の情報は電気信号として伝わっていきます。
脳が音を分析する
私たちが聞いた音が何だったかを最終的に分析するのは脳です。脳の中には人生の中で聞いて学んできた音の情報が、他の情報とも関連付けられながら蓄積されています。
脳は、伝わってきた音の情報から、話し言葉としての意味の意味を分析していきます。また環境の音としての分析も行われ、時には大勢の中でも話している相手のとの会話内容だけを聞きやすくするような調整が行われたりします。
最終的には、音の情報だけではなく、話の流れや場面の様子など、たくさんの情報を分析してコミュニケーションを行ったり、理解を深めたりしているのです。
まとめ
外から見える「耳」はほんの一部にすぎず、頭蓋骨の中に複雑な仕組みがあります。
私たちの耳は、とても繊細で高度な役割を果たしています。空気の波だった音の情報が脳に伝わるまでのどこにトラブルが起きても、難聴が起こります。
(本記事は、言語聴覚士が作成・監修しています。)
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この記事を監修した人
にじいろ補聴器 店長
言語聴覚士・認定補聴器技能者
千葉 星雄(ちば としお)
北海道出身・北海道大学 工学部 卒業
茅ヶ崎リハビリテーション専門学校 言語聴覚学科 卒業
言語聴覚士免許取得後、補聴器専門店と補聴器メーカーでの勤務を経てにじいろ補聴器を開業。